遺伝性出血性末梢血管拡張症、オスラー病

遺伝性出血性末梢血管拡張症いでんせいしゅっけつせいまっしょうけっかんかくちょうしょう(hereditary hemorrhagic telangiectasia:HHT)、オスラー病(Osler-Weber-Rendu disease)とは、皮膚・粘膜・消化管の毛細血管拡張病変からの反復する出血、多臓器(脳・脊髄・肺・肝臓)の動静脈奇形、常染色体優性遺伝などを特徴とする多臓器疾患です。男女差はなく、5,000-10,000人に1人の発生で、国内に約15,000人の患者さんがいます。遺伝性(常染色体顕性(優性)遺伝形式、例えば親が病気であった場合、子が病気になる確率は50%)の病気とされています。

繰り返す鼻血が最初の症状となることが多く、年齢が進むごとに頻度が高くなってきます。その他、舌や唇、口腔粘膜、皮膚などの毛細血管が拡張したり、吐血や下血などが起こり、失血のため、鉄欠乏性貧血となることもあります。また脳や脊髄、肺、肝臓など内臓に動静脈奇形が発生します。時に脳膿瘍や敗血症、肝性脳症を起こし、致命的となることもあります。

全身の臓器に病変が起こる可能性があるため、超音波、CT、MRI、消化管内視鏡検査などを用いた全身検索が必要です。症状と家族歴によって診断する有名な「診断基準」があります。診断されるきっかけは、鼻血を繰り返したり、脳出血の時に診断されたり、もともと家族歴があった場合に診断されます。見つかった場合は、無症状であっても定期的に検査でフォローした方がいいでしょう。発症前でも遺伝子検査(保険適応)を行えば、診断が可能ですが、遺伝カウンセラーの面談を受けるなど、よく理解した上で受けるようにしましょう。

根治的な治療法は無く、症状に応じた治療になります。鼻出血に対し圧迫や凝固療法、粘膜焼灼術を行います。内臓動静脈奇形についてはそれぞれの臓器に応じ、塞栓術や手術などを行います。最近は、様々な新規治療薬が試されていますが、まだ症例報告程度でまとまった研究はありません。

<関連情報>

HHT JAPAN(日本HHT研究会)

オスラー病患者会

・cure HHT

・指定難病(オスラー病 227)

・小児慢性特定疾病情報センター:遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)

国際HHTガイドライン第2版(和訳版)