毛細血管奇形(単純性血管腫)

毛細血管奇形(単純性血管腫)はどんな病気ですか?

毛細もうさい血管けっかん奇形きけいとは、生まれた時から存在する平坦な紅色こうしょくはん(赤あざ)のことをいいます。これまで単純性たんじゅんせい血管腫と呼ばれていました。皮膚表面の表皮から真皮までに拡張した(大きくなった)毛細血管を認め、腫瘍のような膨らみが無いのが特徴です。また他の血管奇形(脈管奇形)に併発することも多いです。

生まれつき顔面や身体に大きな赤あざがあると、ご両親は不安になられると思いますが、実は様々なタイプがあり、1歳くらいで自然に消えてしまうものもあります。

消えないタイプであると診断された場合、レーザー療法を勧められることが多いです。まずは主治医の先生にどのタイプの毛細血管奇形か診断してもらい、必要な治療を進めていきましょう。

毛細血管奇形はどんな病気ですか?

扁平な皮膚表面の赤みが主な症状で、腫瘍のような膨らみは通常無い。体温や外気温の影響で色が変わる(お風呂に入ると赤みが増すなど)。

毛細血管奇形はどんな病気ですか?

表皮から真皮まで拡張した(大きくなった)毛細血管を認める。

患者さん、皮膚断面はイメージです

どんな種類がありますか?

毛細血管奇形(単純性血管腫)の種類
  • サーモンパッチ、ウンナ母斑(ぼはん)
    • (皮膚粘膜)毛細血管奇形、ポートワイン母斑
    • スタージ・ウェバー症候群(中枢神経・眼異常の合併)
    • 骨・軟部組織の過成長を伴う毛細血管奇形
  • 網状の毛細血管奇形
    • 小頭症、大頭症に伴う毛細血管奇形
    • 毛細血管奇形-動静脈奇形
  • 先天性血管拡張性大理石様皮斑
  • 遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)
  • その他

ISSVA分類より改変

毛細血管奇形のみの場合

単純性の毛細血管奇形は、平坦な紅色班で全身の皮膚に起こる可能性があります。大きさは様々で、正常皮膚との差がわかりにくいほど色が薄いものから赤みが強いものもあります。

他の血管奇形との合併の場合

2つ以上の脈管奇形を合併するものは、混合型こんごうがた脈管奇形と呼ばれます。クリッペル・トレノネー症候群はよく知られている疾患の一つですが、その他に、スタージ・ウェバー症候群骨・軟部組織の過成長を伴う毛細血管奇形、小頭症大頭症に伴う毛細血管奇形、毛細血管奇形-動静脈奇形先天性血管拡張性大理石様皮斑遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)などがあります。

サーモンパッチ

25−40%の新生児の前額・上眼瞼・鼻・上口唇に出現する紅色斑で、多くの場合、1歳半くらいまでに自然消退する。
ウンナ母斑ぼはん サーモンパッチと同じように新生児の時に後頚部(うなじの上)、後頭部にみられる紅色斑。サーモンパッチと違い、消えないことが多い。

(皮膚粘膜)毛細血管奇形、ポートワイン母斑

通常の毛細血管奇形
スタージ・ウェバー症候群(中枢神経・眼異常の合併) 顔面の毛細血管奇形に頭蓋内の軟膜血管腫、眼の脈絡膜血管腫を合併することによって、てんかんやけいれん発作、緑内障を起こす。

骨・軟部組織の過成長を伴う毛細血管奇形

四肢に広い範囲の毛細血管奇形と、四肢の肥大を認めるもの。脚長差が起こることもある。クリッペル・トレノネー症候群、パークスウェバー症候群などとの鑑別が必要。
小頭症、大頭症に伴う毛細血管奇形 全身の毛細血管奇形や小頭症、大頭症と四肢の肥大、奇形(合指症など)などを伴う。PIK3CA-related overgrowth Spectrum(PROS)の一つといわれる。

毛細血管奇形-動静脈奇形

毛細血管奇形(小さく、不規則、多発)に動静脈奇形を合併したもの。

先天性血管拡張性大理石様皮斑

新生児期より四肢に大理石のような皮疹ができ、1年くらいで消えることが多い。まれに残ったり、合併症が問題になることがある。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)

皮膚、粘膜の末梢血管拡張と反復する鼻出血、内臓(肺、肝臓、脊髄、消化管など)の動静脈奇形が合併する疾患。(詳しくは動静脈奇形のページへ)

どんな経過をたどりますか?

毛細血管奇形の経過のイメージ

毛細血管奇形は通常、生涯変化せずに経過するとされていますが、一生を通じて患者の体の成長に比例して拡大し、色が濃くなり、肥大・隆起することが知られています。そのため、顔面に起こった毛細血管奇形は、病変直下の軟部組織や骨の過成長を起こすことで、顔の形や口唇、顎の突出、噛み合わせの異常などを起こすことがあります。また皮下に他の血管奇形を合併している場合も、その症状が悪化することがあります。

他の病気とはどうやって区別しますか?

毛細血管奇形は外観上の特徴のみで診断できることが多いですが、同じ新生児、乳幼児期に発生する乳児血管腫、また房状血管腫などの他の血管性腫瘍などと区別が難しい場合もあります。

乳児血管腫は生後3−4ヶ月頃に増大することが特徴で、柔らかく盛り上がってきた場合は乳児血管腫を疑います。房状血管腫は見た目で診断することは難しいですが、毛細血管奇形は先天性なので、判断できます。

毛細血管奇形に合併することがある静脈奇形動静脈奇形などの他の血管奇形も先天性ですが、皮下病変が多いので、画像検査などが必要になることがあります。

気をつけた方がいい症状はありますか?

通常の毛細血管奇形のみであれば、外見上の問題以外に困る症状はほとんどありません。まれに顔面や口唇などで経年変化により肥大・隆起が強くなり、問題となる症状を起こすこともありますが、通常は年単位での変化ですので、経過を見ながら適切な対処を行います。

その他、毛細血管奇形の直下や周辺の骨、軟部組織、中枢神経、眼などに血管奇形が生じる場合があります。これらは非常に稀ですが、クリッペル・トレノネー症候群スタージ・ウェバー症候群などの合併も考えられますので、専門家の先生とよく相談しながら治療などを進めましょう。

治療法を教えてください。

現在の治療は、パルス色素レーザーが一般的です。顔面など目立つ場所や身体に広範囲にあるなど整容面で問題になる場合に治療が行われます。数回の照射で色調の改善が得られ、完全に消失する例もあります。年齢に関係なく、治療できますが、できるだけ早期から開始した方が効果が高いと言われています。