2023.02.17
青色ゴムまり様母斑症候群
青色ゴムまり様母斑症候群(blue rubber bleb nevus (Bean) syndrome: BRBNS)は、全身の皮膚、皮下と消化管に静脈奇形が多発する非常に稀な疾患です。
多くは出生時から小児期に出現しますが、成人になってから見つかる場合もあります。皮膚の静脈奇形が独特なゴム乳首様の青味を帯びていることから、1958年にWilliam Beanにより命名されました。原因は不明とされていますが、病変部位よりTEK(TIE2)遺伝子の異常が見つかっています。
静脈奇形は、全身の皮膚、皮下、特に体幹や上肢に好発し、成長に伴って増加、増大しますが、自然消退はありません。消化管にも起こり、吐血や下血を起こしたり、慢性的な鉄欠乏性貧血の原因となります。また中枢神経、肝臓、脾臓、腎臓、肺、心臓、甲状腺、筋肉などにも病変を伴うとされています。皮下の病変が気管、消化管の閉塞を起こすこともあれば、多発病変による圧迫や、出血などを合併すると命に関わる場合もあります。
血液検査では慢性的な消化管出血や、静脈奇形内での血液消費による鉄欠乏性貧血や多発する病変内での血栓形成、凝固因子の消費による限局性血管内凝固障害のため、フィブリノーゲンの低下、D-ダイマーの上昇、血小板数の軽度低下を認めることがあります。消化管病変の検索は内視鏡や、カプセル内視鏡が有用です。全身の皮膚病変はCT検査、もしくはMRI検査なども用います。
治療は対症療法が基本です。大量出血時は輸血が必要なこともあります。軽症の場合は、止血剤(トランサミンなど)がよく使用されます。また慢性的な鉄欠乏性貧血に対しては鉄剤を投与します。消化管病変からの急激な出血に対しては内視鏡的治療や外科的切除が必要になります。最近は、シロリムスの高い治療効果が期待されています。国内で医師主導治験(SIVA治験)が実施され、将来、保険適応となる見込みです。