Nature Medicineに脈管異常の遺伝子検査の有用性が報告されました!

2023年6月1日付けで、Nature Medicineという医学系の最高峰の雑誌に「Genomic profiling informs diagnoses and treatment in vascular anomalies(脈管異常における遺伝子解析は診断と治療に情報を提供する)」という論文が掲載されました。フィラデルフィア小児病院の研究者を中心に、生命を脅かす可能性のある脈管異常の患者の組織、血液(cell free DNA、血漿に含まれる断片化されたDNAのこと)から遺伝子解析をすることで、様々な遺伝子異常が見つかったとする内容です。
患者は主に、難治性リンパ管疾患患者(リンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症など)の症例で、これらの症例は病変部位からの組織採取が困難であり、かつ病変部位の体細胞モザイク変異の含まれる確率が低いため、検出が困難です。血液の血漿にはcell free DNAという断片化された小さなDNAが含まれており、これらを網羅的に、深く解析をすることで今回のような研究が可能となりました(リキッドバイオプシーといいます)。また難治性リンパ管疾患患者の41%に遺伝子異常が検出され、その患者に分子標的治療薬を投薬したところ、63%(35/55)に改善を認めました。

私達も以前に、リンパ管腫症(KLA)症例の血漿中cell free DNAからNRAS遺伝子変異を検出し、報告していますが、それがさらに症例数が増えて解析されたような内容です(Ozeki M, Aoki Y, Nozawa A, Yasue S, Endo S, Hori Y, Matsuoka K, Niihori T, Funayama R, Shirota M, Nakayama K, Fukao T. Detection of NRAS mutation in cell-free DNA biological fluids from patients with kaposiform lymphangiomatosis. Orphanet J Rare Dis. 2019 Sep 11;14(1):215

がんのゲノム医療が最近進んでいますが、がんゲノムでは治療薬の選択までに進む例は非常に少ないです。しかし、このリンパ管疾患の場合は驚異的な治療到達率だと思います。大変期待できますし、日本では研究レベルでしかできない解析ですが、より安く、スムーズにできるよう、さらに研究していきたいと思います。

https://www.nature.com/articles/s41591-023-02364-x

Li D, Sheppard SE, March ME, Battig MR, Surrey LF, Srinivasan AS, Matsuoka LS, Tian L, Wang F, Seiler C, Dayneka J, Borst AJ, Matos MC, Paulissen SM, Krishnamurthy G, Nriagu B, Sikder T, Casey M, Williams L, Rangu S, O’Connor N, Thomas A, Pinto E, Hou C, Nguyen K, Pellegrino da Silva R, Chehimi SN, Kao C, Biroc L, Britt AD, Queenan M, Reid JR, Napoli JA, Low DM, Vatsky S, Treat J, Smith CL, Cahill AM, Snyder KM, Adams DM, Dori Y, Hakonarson H. Genomic profiling informs diagnoses and treatment in vascular anomalies. Nat Med. 2023 Jun 1. doi: 10.1038/s41591-023-02364-x. Epub ahead of print. PMID: 37264205.

(文章:小関道夫)