第67回日本形成外科学会総会・学術集会 教育講演

第67回日本形成外科学会総会・学術集会 教育講演にて、

難治性脈管腫瘍・脈管奇形に対する薬物療法の講演をします!

4月11日(木)10:10~10:40
座長 杠 俊介先生(信州大学医学部 形成再建外科学教室)

難治脈管腫瘍・脈管奇形に対する薬物療法

演者 小関 道夫先生(岐阜大学大学院医学系研究科 小児科学)

難治性脈管腫瘍・脈管奇形に対する薬物療法

 

難治性の脈管腫瘍・脈管奇形(血管腫・血管奇形)とは、カサバッハ・メリット現象を起こすカポジ型血管内皮腫又は房状血管腫、リンパ管腫、リンパ管腫症、ゴーハム病、静脈奇形、青色ゴムまり様母斑症候群、混合型脈管奇形、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群などを指す。四肢の片側肥大及び疼痛、潰瘍、機能障害、臓器障害等、様々な症状を起こし、小児慢性特定疾病や指定難病である。近年、これらの病変部位からTEK、PIK3CA遺伝子の体細胞活性化型変異が検出され、異常な脈管を作ることによって発症することが病因ではないかと考えられている。その中で、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤であるシロリムスの本疾患に対する有効性が注目されている。我々は2017年よりリンパ管疾患に対するシロリムス錠の医師主導治験を実施したところ、高い有効性を認め、2021年9月に承認された。さらに2020年より、小児用製剤である顆粒剤を加え、リンパ管疾患以外の疾患も加えた治験も実施したところ、投与開始24週後の標的病変の奏効率は53.8%(7/13例、95%CI:25.1%~80.8%)であり、本剤が有効であることが示された(血管性腫瘍100.0%、リンパ管疾患25.0%、静脈奇形66.7%、混合型脈管奇形患者で50.0%)。投与開始12及び52週後の標的病変の奏効率はいずれも61.5%(8/13例、95%CI:31.6%~86.1%)であった。有害事象は全例(100.0%)に発現し、口内炎が最も多く(76.9%)、次いで、発熱(69.2%)、下痢(30.8%)、上咽頭炎、RSウイルス感染、ざ瘡、上気道の炎症及び好中球数減少(23.1%)などがみられた。30.8%に重篤な有害事象を認めたが、中止に至った例はなかった。今回、薬物療法の全体像と特にシロリムス療法について取り上げて解説する。