PPIって何ですか?
患者・市民参画(Patient and Public Involvement: PPI)とは、医学研究・臨床試験プロセスの一環として、研究者が患者・市民の知見を参考にすることをいいます。(ここの「患者・市民」は患者、家族、元患者(サバイバー)、未来の患者が想定されています。)それによって、医学研究・臨床試験の現場がよりよいものとなること、またその成果が社会によりよい形で普及・還元されることに寄与するとして、日本医療研究開発機構(AMED)がこの取り組みを進めています。
AMEDホームページ 研究への患者・市民参画(PPI) |
https://www.amed.go.jp/ppi/ |
---|---|
PPI JAPAN | https://www.ppijapan.org/ |
患者・市民参画
(PPI, Patient and Public Involvement)について
(AMED資料より) 医療分野研究開発推進計画には、「臨床研究及び治験の実施に当たっては、その立案段階から被験者や患者の参画を促進するとともに、患者・国民への臨床研究及び治験の意義やそれが国民にもたらすメリット等についての啓発活動を積極的に推進する必要がある」とあります。
小関班でのPPIの取り組みを
教えてください。
小関班では、「血管腫・血管奇形(脈管奇形)に対するシロリムスを中心とした分子標的治療」という新しい治療の研究をしています。もともと血管腫・血管奇形の治療というのは、薬で治すというよりは、手術や硬化療法、血管内治療が中心です。そのため、いくらシロリムスの研究を進めても、薬物療法をどのように日常診療に活かすか、患者さんはもちろん、患者さんの主治医の先生方にも理解がしづらいです。
私たちは、2021年10月に岐阜で行われた「第17回日本血管腫血管奇形学会」にて、AMEDの勝井恵子先生(健康・医療データ研究開発課)の講演で、PPIの重要性を知りました。私たちは、治験や臨床研究を行い、論文化、学会発表をすることで医学研究を進めるとともに、そのプロセスにおいて患者の皆様や一般の方の知見を参考とする重要性を再認識しました。
また同時に、「血管腫・血管奇形の一般に公開されている情報の少なさ」や、「このままでは、いくら研究を行い、シロリムスが保険適応となっても、本当に必要としている患者さんに伝わらなければ、せっかくの薬も役に立てないのではないか?」「伝えようとしている情報は、本当に患者さんに届く(理解される)ものか?」「アクセスが可能なものかどうか?」という疑問が湧きました。
小関班の研究の情報公開に関する問題点
- 患者さんにとって、本当に必要な研究、情報公開ができているかどうか?
- シロリムスなど血管腫・血管奇形に対する薬物療法が一般的ではなく、理解しづらい
- シロリムスが何故、有効か、どのように使用するべきかなど、細かい情報が伝えられていない
- 正確な情報を十分公開できていない
小関班のPPI活動は、「本当のニーズに合わせた情報を、患者さん、市民の方のご意見を取り入れることによって、きちんと患者さんに届けられるように」という考えのもとに始まりました。
小関班としてPPIを行う目的
- 研究者からの視点ではなく、患者・市民としての幅広い視点より、より良い情報の公開、説明を目指すことで、より良い研究、ひいては患者さんの利益に繋げる。
- そのために、研究や情報公開物、発表への「ご意見」を求める。
- 一般の方以外に、ITの専門家やサイエンスイラストレーターとの共同作業によって、より進んだ情報公開や共有の方法を目指す。
ご意見
- 新しい研究(例:遺伝子研究)の患者向けの説明・同意文書の内容の評価
- シロリムスや疾患に関する患者向けのパンフレット、ホームページなどの公表、発表前にわかりづらい点がないか、理解しやすいものかを評価、コメント
- 患者・一般向けのシンポジウムの企画、構成や、発表内容、スライドの確認
- 研究、活動について、研究者が気付いていないニーズを、患者の視点からご意見頂く
情報公開への参加
- 患者向けのパンフレットの作成
- 共同で研究班の新しいホームページの作成、更新、アイデアのご提供(HP制作などの作業は基本的に専門家、企業に研究班が依頼)
- SNSでの発信(発信者は研究班の予定)
2022年2月6日にオンラインセミナーを行い、私たちのPPI活動の内容の紹介とともに、PPIメンバーの募集を行ったところ、1ヶ月で15名の方から応募がありました。
PPIで行っている活動は以下のとおりです。
- 研究班の新しいホームページの作成
- 動画、患者向けのパンフレットの作成
- SNSでの発信(発信者は研究班の予定)
twitter |
@myakkanijoppi |
---|---|
Facebook |
https://www.facebook.com/srlcva |
Instagram |
https://www.instagram.com/srlcva/ |
- 患者向けセミナー(年に2回)
- 2021年度 第1回 2022年2月6日 案内、資料、動画
- 2022年度 第1回 2022年9月25日 案内、資料、動画
- 2022年度 第2回 2023年3月12日 案内、資料
- 意見交換会
- 2022年度 第1回 2022年6月19日 案内、資料、動画
- 2022年度 第2回 2022年8月28日 案内、資料、動画
- 2022年度 第3回 2023年12月11日 案内、資料、動画
3つのグループ(HP・動画作成、HP内容確認、企画)に分かれ、それぞれで担当する内容について、小関班と共同で進めています。またPPIメンバーの方以外の患者さん、家族、一般の方も参加できる意見交換会も定期的に行い、アンケートなどで活動に対してご意見を頂きます。AMED小関班でのPPI活動は2023年3月で終了しますが、こうした取り組みがこれからの血管腫・血管奇形の研究だけでなく、診療に役立つことを願っています。
PPIメンバーの皆様
高橋幸生様、荒武美香様、大河正治様、紺野晶子様、横山江里子様、稲田昌二郎様、鹿島悦子様、赤根大吾様、馬田朋子様、仰木みどり様(順不同、名前の掲載をご承諾頂きました方のみ)
このホームページの目的は
何ですか?
血管腫・血管奇形に対する新しい治療法である、「シロリムスによる分子標的治療」について、日本中で困っている患者さんやご家族などに情報を伝えることです。またその情報は、わかりやすく、伝わりやすいように心がけます。ホームページの情報はシロリムスを中心にした分子標的治療のことだけでなく、シロリムス以外の新しい治療薬の候補や、その仕組み、最新の研究についても公開します。また血管腫・血管奇形自体が難しい病気ですので、なるべくわかりやすく病気を解説します。またこうした薬の情報は、患者さん、ご家族だけでなく、血管腫・血管奇形の専門家ではない一般の医師、薬剤師、研修医の先生、医学生さんにも知って頂き、日本の診療レベルの向上に繋がれば、幸いです。
ホームページの情報は、パソコン、スマホから情報がすぐにアクセスできるようにしていますが、動画なども作成します。また病院などで患者さんにわかりやすく説明するためのパンフレットも用意しています。
またセミナー、学会などの最新の情報は、SNSでも発信し、より幅広い年齢層の患者さん、家族へ届くようにします。何か、ご不明な点や、内容への質問、ご意見などございましたら、お問い合わせフォームからご入力ください。
AMED小関班について
AMED小関班は、令和3年度の「日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業」にて、「シロリムス(顆粒剤・錠剤)による難治性の脈管腫瘍・脈管奇形に対する分子標的治療法を開発する研究」として採択された研究班です。
大きな目的は、「血管腫・血管奇形に対するシロリムス療法を確立すること」です。そのために、シロリムス(ラパリムス)の錠剤、顆粒剤を用いた医師主導治験を行い、薬事承認を目指しています。治験だけでなく、特定臨床研究も行い、治験に参加できなかった患者さんへ投与する試験も行っています。
また臨床試験のデータをまとめるだけでなく、画像検査、病理検査などの特徴をまとめたり、遺伝子の解析を行う研究も行っています。また患者さんではなく、細胞やモデルマウスを使った薬の実験なども行っています。こうした研究は全て「シロリムスの分子標的治療」という新たな治療法を発展させるもので、将来の患者さんの診療に役立てることを目的としています。
研究班のメンバーは、全国の血管腫・血管奇形の診療の専門の医師だけでなく、画像検査、病理検査、薬の研究(治験などの薬事関係)、統計解析、薬理などの専門家など、全国から様々な方が集まり、協力して進めています。また各病院の治験担当の薬剤師、事務、秘書さんなど多くの方の協力を得て、進めています。また提携企業であるノーベルファーマ株式会社からはラパリムスや様々な情報を頂き、治験についても複数の企業の方と連携しています。
日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業
シロリムス(顆粒剤・錠剤)による
難治性の脈管腫瘍・脈管奇形に
対する分子標的治療法を開発する研究
小関 道夫(岐阜大学医学部附属病院小児科) | 研究統括、組織構築、治験調整医師 |
---|---|
浅田 隆太(岐阜大学医学部附属病院先端医療臨床研究推進センター) | 規制対応、治験調整事務局運営 |
橋本 大哉(名古屋市立大学大学院医学研究科) | 各種評価法のバリデーションおよび最適化、統計解析 |
藤野 明浩(国立成育医療研究センター小児外科) | 疾患レジストリ改良、患者リクルート委員会の運営、治験分担医師 |
黒田 達夫(慶應義塾大学小児外科) | 治験責任医師、患者フォローアップ体制構築 |
渡邊 彰二(埼玉県立小児医療センター) | 患者リクルート、専門施設との連携 |
野坂 俊介(国立成育医療研究センター放射線科) | 中央診断委員会の統括、画像評価法の確立 |
梅澤 明弘(国立成育医療研究センター研究所) | 薬物動態解析、治験実施施設連携 |
松岡 健太郎(東京都立小児総合医療センター病理診断科) | 病理中央診断、病理バイオマーカーの確立 |
前川 貴伸(国立成育医療研究センター総合診療部) | 治験責任医師、小児患者への安全な投与法の確立 |
平川 聡史(浜松医科大学医学部) | 安全性評価委員会の統括、前臨床研究 |
川久保 尚徳(九州大学小児外科) | 治験責任医師、最適な治療法選択アルゴリズムの作成 |
田尻 達郎(九州大学小児外科) | 臨床研究の分担医師、関連学会、研究班との連携 |
文野 誠久(京都府立医科大学小児外科) | 治験責任医師、関連学会、研究班との連携 |
古川 泰三(京都府立医科大学小児外科) | 治験分担医師、既存の薬物療法の後方視的検討 |