診断基準

診断基準(diagnostic criteria)とは、ある病気を正確に診断するために、医学的に定められた基準(条件)のことです。症状、検査所見、画像所見、家族歴、遺伝子検査などの項目を組み合わせて、その病気であるかどうかを判断するための「ものさし」として使われます。

【なぜ診断基準が必要なのか】
血管腫・血管奇形の分野では、見た目が似ていても異なる病気であったり、同じ病気でも症状の出方が様々であったりします。診断基準があることで、どの医師が診ても同じ基準で診断でき、適切な治療につなげることができます。また、診断基準は医療費助成制度(指定難病、小児慢性特定疾病)の認定にも必要です。

【血管腫・血管奇形分野での代表的な診断基準】
遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT / オスラー病)の診断基準(キュラソー基準)

  • 繰り返す鼻出血
  • 皮膚・粘膜の毛細血管拡張
  • 内臓の動静脈奇形(肺、脳、肝臓など)
  • 家族歴(第一度近親者にHHT患者がいる)

→4項目中3項目以上で「確定」、2項目で「疑い」、1項目以下で「可能性低い」

② ISSVA分類
• 血管腫・血管奇形全体を分類する国際的な基準
• 「腫瘍」と「奇形」を区別し、さらに血流の速さや構成成分で分類
正確な診断名をつけるための世界共通の分類法ではあるが、細かな基準は定められていない

③ 指定難病・小児慢性特定疾病の診断基準
• 医療費助成を受けるために必要な基準
• 各疾患ごとに厚生労働省が定めた基準がある
• 「客観的な診断基準が確立していること」が指定難病の要件の一つ
・指定難病の場合、医療費助成を受けるためには、さらに重症度分類の中で中等症である必要がある
〈例〉
巨大静脈奇形(頚部口腔咽頭びまん性病変)の診断基準
(I)脈管奇形診断基準に加えて、後述する(II)細分類診断基準にて巨大静脈奇形(頚部口腔咽頭びまん性病変)と診断されたものを対象とする。鑑別疾患は除外する。
 
(I)脈管奇形(血管奇形及びリンパ管奇形)診断基準
軟部・体表などの血管あるいはリンパ管の異常な拡張・吻合・集簇など、構造の異常から成る病変で、理学的所見、画像診断あるいは病理組織にてこれを認めるもの。
本疾患には静脈奇形(海綿状血管腫)、動静脈奇形、リンパ管奇形(リンパ管腫)、リンパ管腫症・ゴーハム病、毛細血管奇形(単純性血管腫・ポートワイン母斑)及び混合型脈管奇形(混合型血管奇形)が含まれる。
 
鑑別診断
1.血管あるいはリンパ管を構成する細胞等に腫瘍性の増殖がある疾患
例)乳児血管腫(イチゴ状血管腫)、血管肉腫など
2.明らかな後天性病変
例)一次性静脈瘤、二次性リンパ浮腫、外傷性・医原性動静脈瘻、動脈瘤など
 
(II)細分類
巨大静脈奇形(頚部口腔咽頭びまん性病変)診断基準
画像検査上、頚部・口腔・咽頭の全ての領域にびまん性連続性に病変を確認することは必須である。1の画像検査所見のみでは質的診断が困難な場合、2あるいは3を加えて診断される。巨大の定義は患者の手掌大以上の大きさとする。手掌大とは、患者本人の指先から手関節までの手掌の面積をさす。
1.画像検査所見
超音波検査、MRI検査、血管造影検査(直接穿刺造影あるいは静脈造影)、造影CT検査のいずれかで、頚部・口腔・咽頭の全ての領域にわたってびまん性かつ連続性に、拡張又は集簇した分葉状、海綿状あるいは静脈瘤状の静脈性血管腔を有する病変を認める。内部に緩徐な血流がみられるが、血栓や石灰化を伴うことがある。
2.理学的所見
腫瘤状あるいは静脈瘤状であり、表在性病変であれば青色の色調である。圧迫にて虚脱する。病変部の下垂にて膨満し、拳上により虚脱する。血栓形成の強い症例などでは膨満や虚脱の徴候が乏しい場合がある。
3.病理所見
拡張した血管の集簇がみられ、血管の壁には弾性線維が認められる。平滑筋が存在するが壁の一部で確認できないことも多い。成熟した血管内皮が内側を覆う。内部に血栓や石灰化を伴うことがある。

【診断基準の使われ方】
診断基準は「必ずすべての項目を満たさないと診断できない」というものではなく、多くの場合「何項目中、何項目以上を満たせば診断」という形式になっています。また、遺伝子検査で原因遺伝子の変異が見つかれば、臨床症状が揃っていなくても診断が確定する場合もあります。
注意点診断基準を満たさなくても病気でないとは限りません。発症早期や軽症例では基準を満たさないこともあります。気になる症状がある場合は、専門医に相談しましょう。

お役立ちコンテンツ

関連情報
• 関連用語: ISSVA分類、指定難病、小児慢性特定疾病、遺伝子検査、鑑別診断
• 代表的な診断基準を持つ疾患: 遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)、スタージ・ウェーバー症候群、クリッペル・トレノネー症候群、CLOVES症候群など
• 参考: 血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022

(最終編集:2026212日)