2026.02.19
体細胞変異
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日本語名 | 体細胞変異 |
| 英語名 | Somatic mutation |
| 略語 | ― |
| 読み方 | たいさいぼうへんい |
| カテゴリ | 6、静脈奇形 |
体細胞変異(somatic mutation)とは、生殖細胞(精子・卵子)以外の体の細胞(体細胞)に生じる遺伝子変異のことです。受精後の発生過程や出生後に起こり、変異を持つ細胞とその子孫細胞のみに存在します。
【体細胞変異と生殖細胞変異の違い】
| 特徴 | 体細胞変異 | 生殖細胞変異 |
|---|---|---|
| 変異が起こる細胞 | 体細胞(皮膚、血管など) | 生殖細胞(精子・卵子) |
| 変異の時期 | 受精後〜生涯にわたって | 受精前(親から受け継ぐ) |
| 変異の分布 | 一部の細胞のみ(モザイク) | 全身の全ての細胞 |
| 遺伝性 | 次世代に遺伝しない | 50%の確率で子に遺伝 |
| 血液検査での検出 | 通常検出困難 | 検出可能 |
【モザイクとは】
体細胞変異は「モザイク(mosaic)」という状態を生じます。モザイクとは、一人の体の中に遺伝子変異を持つ細胞と持たない細胞が混在している状態です。変異が発生の早い段階で起こるほど、変異を持つ細胞の割合が多くなり、病変も広範囲になる傾向があります。
【血管腫・血管奇形と体細胞変異】
血管腫・血管奇形の多くは、体細胞変異によって引き起こされることが明らかになっています。病変部位の細胞にのみ遺伝子変異が存在し、正常な組織には変異がありません。
<静脈奇形>
・TEK(TIE2)遺伝子:散発性静脈奇形の約60%で体細胞変異が検出される
・PIK3CA遺伝子:静脈奇形の一部で体細胞変異が検出される
<リンパ管奇形>
・PIK3CA遺伝子:多くのリンパ管奇形で体細胞変異が検出される
<毛細血管奇形>
・GNAQ遺伝子、GNA11遺伝子:ポートワイン毛細血管奇形で体細胞変異が検出される
<動静脈奇形>
・MAP2K1遺伝子、KRAS遺伝子、BRAF遺伝子:散発性動静脈奇形で体細胞変異が検出される
<先天性血管腫>
・GNAQ遺伝子、GNA11遺伝子:先天性血管腫で体細胞変異が検出される

【機能獲得型変異】
血管腫・血管奇形で見つかる体細胞変異の多くは「機能獲得型変異(gain-of-function mutation)」です。これは、遺伝子がコードするタンパク質の機能が過剰に働くようになる変異で、結果として血管やリンパ管の細胞が異常に増殖したり、正常な構造を形成できなくなります。
【体細胞変異の検出方法】
体細胞変異は病変部位の細胞にのみ存在するため、血液検査では通常検出できません。病変組織を採取し、次世代シークエンサーなどの高感度な遺伝子解析技術を用いて検出します。変異を持つ細胞の割合(変異アリル頻度)が低い場合は、検出が困難なこともあります。
【治療への応用】
体細胞変異によって活性化されるシグナル伝達経路(PI3K/AKT/mTOR経路、RAS/MAPK/MEK経路など)を標的とした分子標的薬が、血管腫・血管奇形の新たな治療法として研究されています。
・シロリムス:mTOR阻害剤
・アルペリシブ、セラベリシブ:PI3K阻害剤
・セルメチニブ、トラメチニブ:MEK阻害剤

【関連情報】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 関連用語 | 生殖細胞変異、モザイク、機能獲得型変異、遺伝子、シグナル伝達経路 |
| 関連疾患 | 静脈奇形、リンパ管奇形、毛細血管奇形、動静脈奇形、PROS |
| 関連遺伝子 | TEK(TIE2)、PIK3CA、GNAQ、GNA11、MAP2K1、KRAS、BRAF |
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(最終編集:2026年2月19日)