常染色体顕性(優性)遺伝
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日本語名 |
常染色体顕性(優性)遺伝 |
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英語名 |
Autosomal dominant inheritance |
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略語 |
AD |
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読み方 |
じょうせんしょくたいけんせい(ゆうせい)いでん |
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カテゴリ |
6、静脈奇形 |
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備考 |
2021年より「優性」から「顕性」への用語変更が推奨されている |
常染色体顕性(優性)遺伝とは、遺伝の仕方(遺伝形式)の一つで、父親または母親のどちらか一方から病気の原因となる遺伝子変異を受け継ぐだけで、その病気を発症する遺伝形式です。
【用語について】
従来は「優性遺伝」「劣性遺伝」という用語が使われてきましたが、「優れている」「劣っている」という誤解を招きやすいため、日本医学会では2021年より「顕性(けんせい)」「潜性(せんせい)」という用語への変更を推奨しています。本サイトでは新しい用語を使用しつつ、わかりやすさのため(優性)(劣性)を併記しています。
【遺伝の仕組み】
ヒトの染色体は全部で46本あり、そのうち44本が「常染色体」、2本が「性染色体」です。常染色体は2本1組(ペア)で22組あり、それぞれ父親と母親から1本ずつ受け継ぎます。常染色体顕性遺伝の病気では、ペアになっている遺伝子のうち片方だけに変異があれば発症します。
【遺伝の確率】
親のどちらか一方が常染色体顕性遺伝の病気を持っている場合:
• 子どもが病気を受け継ぐ確率: 50%(2分の1)
• 子どもが病気を受け継がない確率: 50%(2分の1)
• 男女差はなく、息子にも娘にも同じ確率で遺伝する
• 病気を受け継がなかった子どもは、その子の子ども(孫)に病気を伝えることはない
【血管腫・血管奇形で常染色体顕性遺伝をとる疾患】
① 遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT / オスラー病)
• 皮膚・粘膜の毛細血管拡張、繰り返す鼻出血、内臓の動静脈奇形を特徴とする
• 原因遺伝子: ENG、ACVRL1(ALK1)、SMAD4、GDF2 など
• 親が病気の場合、子どもが発症する確率は50%
② 家族性皮膚粘膜静脈奇形(VMCM)
• 皮膚や粘膜に小さな静脈奇形が多発する
• 原因遺伝子: TEK(TIE2)
③ 毛細血管奇形-動静脈奇形症候群(CM-AVM)
• 毛細血管奇形と動静脈奇形・動静脈瘻を合併する
• 原因遺伝子: RASA1、EPHB4
④ 脳海綿状血管腫(CCM)の一部
• 家族性の場合は常染色体顕性遺伝
• 原因遺伝子: KRIT1、CCM2、PDCD10
⑤ 原発性リンパ浮腫の一部
• ミルロイ病、リンパ浮腫-睫毛重生症候群など
• 原因遺伝子: FLT4(VEGFR3)、FOXC2 など
よくある質問
Q: 親に病気がないのに、子どもが発症することはありますか?
A: あります。「孤発例」または「新生突然変異(de novo変異)」といい、親の精子や卵子ができる過程、または受精直後に新たに遺伝子変異が生じることがあります。この場合、その子どもから次の世代には50%の確率で遺伝する可能性があります。
Q: 同じ家族でも症状の重さが違うのはなぜですか?
A: 常染色体顕性遺伝の病気でも、同じ遺伝子変異を持っていても症状の現れ方(表現度)や発症の有無(浸透率)が異なることがあります。これを「表現度の差」「不完全浸透」といいます。環境要因や他の遺伝子の影響も関係すると考えられています。
Q: 遺伝子検査を受けるべきですか?
A: 遺伝子検査を受けるかどうかは個人の判断です。検査を受ける前に、遺伝カウンセラーや遺伝専門医に相談し、検査の意味や結果がもたらす影響について十分に理解することが大切です。一部の疾患では遺伝学的検査が保険適用となっています。
遺伝カウンセリングについて
遺伝性の病気について心配がある場合は、遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。遺伝カウンセラーは、病気の遺伝に関する情報提供や、遺伝子検査についての説明、心理的サポートを行う専門職です。
関連情報
• 関連用語: 常染色体潜性(劣性)遺伝、遺伝子、遺伝子検査、遺伝カウンセラー、浸透率、表現度
• 関連疾患: 遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)、家族性皮膚粘膜静脈奇形(VMCM)、毛細血管奇形-動静脈奇形症候群(CM-AVM)、脳海綿状血管腫(CCM)
• 関連遺伝子: TEK(TIE2)、ENG、ACVRL1、RASA1、EPHB4、KRIT1
(最終編集:2026年2月14日)